友達の運転するクルマに乗って事故でケガをした補償が減額される?
目次
友人の運転で事故にあいケガをすると補償が減る?
友人のクルマに乗車中の事故でケガをしたら、「保険金を減額される」という話しを聞くことがあります。
実際のところでは、被害者の側に事故への積極的関与、または、運転の危険を知っていたという事実でもなければ減額はありませんので安心して下さい。
次のケーススタディを読んで、参考にしてください。
友達のクルマに乗っていて事故でケガをした
友達のクルマに乗せてもらったTさんが事故でケガをしました。
会社からの帰宅途中の駅からの帰り道、偶然あった友人Nさんの好意で自宅まで送ってくれるということで、せっかくだから乗せてもらった。
折しも小雨の降る状況だったので友人も注意して運転していたが、傘をさして運転していた自転車が不意に飛び出し、Nさんは、それを避けるために道路脇の側溝に脱輪しガードレールに衝突した。
その事故で助手席側に乗っていたTさんは、左腕をドア周辺にしたたかぶつけて肘が動かせない程の痛みを負いました。
事故は、まれなことですが、「友人のクルマに乗る」という行為は、それほどまれなことではないでしょう。
子供の頃から住んでいる地域で幼なじみの友人が多い環境に住んでいれば、日常で友人に出会うことなどよくある話です。
今回の事故に有ったTさんとNさんも、そんな関係で中学時代から高校まで約6年間よく遊んでいた友人お一人です。
地元に駅前で偶然に会ったことからクルマに乗っていたNさんがTさんに「乗ってけよ」と言うのは、ごくあたりまえの対話だったに違いありません。
友だちのクルマだと補償が減額になる?
飛び出した自転車との接触もなく、幸いNさんのクルマが傷ついた単独事故でしたが、Tさんはしたたかぶつけた腕が、翌日動かせないほどはれてしまったため、大事を取って医療機関に見てもらいます。
診断では、骨折には至っていないが強くぶつかったことと、ぶつかる向きが悪かったことから亀裂骨折が生じており、全治2ヶ月程度と診断され、ギプスを付けて通院治療をすることになりました。
この時点で物損事故で届け出をしていたNさんも保険会社に相談をして、Tさんのケガの治療費支払いについて依頼することになりました。
その時保険会社に言われたのが、クルマに乗り合わせた状況によっては「好意同乗による保険金の減額があるかもしれない」ということです。
「好意同乗」字を見るとなんとなく意味を解すことができますが、今ひとつ納得がいきません。
Nさんは、自分の運転ミスによって事故を起こし、Tさんにケガをさせてしまったことを大変申し訳なく思っていましたので、保険金が減額されるなどとんでも無いと保険会社に憤りを感じます。
被害者に求められる帰責性って?
確かに、Tさんは、積極的ではないとは言えNさんのクルマに乗ることで「雨に濡れずに自宅に早く帰れる」という目的を持って同乗しました。
Tさんは明らかにNさんのクルマに乗ることで利益が得られることを期待していますから、通常の対人賠償事故で相手に補償する場合と同じというのは、賠償の公平性を欠くのではないかという考え方です。
以前は、こうした考えから一定の割合で好意同乗による減額がなされていましたが、現在では、事故に対する帰責性などが考慮されるため、今回のTさんのケガについては、通常どおり減額されずに支払われることとなりました。
Nさんは、保険会社からの連絡を受けて、ホッとしました。
今回の事故で好意同乗に当たるかどうかの判断をする「帰責性」についてもう少し掘り下げてみます。
この事故でTさんには帰責性がなかったとされた部分です。
1つ目は、Tさんの運転妨害など事故が起こるような積極的な関与が有ったかという点です。
2つ目は、Nさんが事故を起こす可能性があることをTさんが予め知っていて同乗したのか?という点です。
1つ目は、Tさんは正規の搭乗位置でシートベルトを付けて乗車しており、運転の妨げになるような行為はなかったと、Nさんの証言において確認されています。
2つ目は、今回の事故は全くの偶然により起きており、それ以前にNさんの飲酒や投薬などもなく、Tさんもいつもと変わりないNさんの運転に不安を感じる部分は感じられませんでした。
最近は少ない好意同乗による減額
一般的に見て、せっかくの友人の好意による申し出を、「もしかしたら、事故を起こすかもしれない」、「事故が起きても友人だから、補償が満足にしてもらえないかもしれない」と疑って、乗車を断る人は、ほとんどないと言ってもいいでしょう。
たしかにある程度の年令に達し、家庭を持つものが異性の友人のクルマに誘われたから同乗した、というような行動はあまり褒められたものではありません。
しかし、10代20代の独身者で同性の友人だったら、また、隣近所のお知り合いからの誘いだったら、むげに断れないというのが人付き合いの道理というものです。
つまり、好意同乗による減額は社会背景もかんがみて、現在はあまり適用されなくなっています。
では、どのような場合に好意同乗の適用があるかといえば、被害者による明らかな運転の妨害、飲酒や極度の過労など、正常な運転ができないと判断の付く状態のクルマへの同乗の場合に適用になります。
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