ホントにアンフェア?福井正面衝突事故の遺族への賠償を全公開
福井正面衝突事故の遺族への賠償を全公開!
福井新聞のOnlineニュースによる、「ぶつけられた被害者側に4000万円あまりの賠償金支払い命令」の賠償内容について詳細な内容について解説します。
そもそも、この事故に関する訴訟は、「甲事件」「乙事件(※)」の2つの原告側が存在する訴訟ですが、一方の一部の内容を意図的にクローズアップして報道されたので、大きな誤解を生じているようです。
このページでは、報道で注目された「乙事件」について、判決文全文からできるだけ分かりやすいよう、遺族に対する賠償内容に絞って解説します。
くわしくは、次のページ「無保険いねむり運転車両に衝突された側への賠償は誰が払う?」にて解説しています。
訴訟の原告と被告について
他の記事の内容と重複しますが、このページから見ていただく人のために訴訟の原告と被告について整理しておきます。
この訴訟の「甲事件」原告は、亡くなった人の遺族3人です。
賠償請求を求められている被告については、居眠り運転をした運転者、並びに、正面衝突されたクルマの所有者(法人)が対象です。
事故原因となった車両と搭乗していた人
車両:G車
車両所有者:亡Gさん
運転者:Aさん(被告)
搭乗者:亡Gさん(死亡)
搭乗者:Kさん(訴外)
G車の対向車線はみ出しにより正面衝突された車両と搭乗していた人
車両:F車
車両所有者:法人E社(被告)
運転者:Fさん(乙事件の原告)
事故で亡くなったGさんの遺族(甲事件の原告)
父親:Cさん
母親:Dさん
※以下、遺族をまとめての表記は「原告Bさんら」としています。
なお、アルファベット呼称については、裁判の判決文に準じています。
被害者亡Gさんの遺族 原告Bさんらの賠償請求
ニュースでも話題になり注目されたのは、この「甲事件」のBさんらが求めた賠償請求裁判において、被告E社に命じられた判決内容でした。
先ず、Bさんらの請求内容を見てみましょう。
Bさんらは、請求の相手として被告AさんとE社に連帯責任として、総額8233万円あまりの損害賠償を求めました。
請求されたおおまかな内訳は、以下のとおりです。
治療費関係:約32万円
葬儀費用等:150万円
逸失利益:4449万円
死亡慰謝料:1700万円
車両全損の時価額:81万円
レッカー料、廃車抹消登録費用:約6万円
被告側からの既払い:約-32万円(治療費関係)
小計約6386万円
Bさんらが固有の慰謝料:計1100万円
(Bさん500万円、Cさん300万円、Dさん300万円)
Bさんらの弁護士費用:計747万円
(Bさん475万円、Cさん136万円、Dさん136万円)
Bさんらへの賠償額判決内容
Bさんらが求めた損害賠償請求は、Aさんは争いませんでしたので、請求が全額認められました。
しかしE社は、運転者Fさんの無過失を主張しましたが、最終的に「Fさんの過失があったとも無かったとも認められず」加害者側の無過失の立証が成立しないため、自賠法3条に基づき賠償責任が認められました。
しかし、E社に対して亡Gさんの運行に関わる過失3割とシートベルト非装着による本人過失1割の計4割が認定されたため、請求額の約6割相当の支払いが命じられています。
また、対向運転者Fさんの過失についてあったとも無かったとも認められず、Bさんらは、民法709条における被害者による加害者の過失の立証ができなかったことから、E社に対する物損の請求は退けられています。
こうしたことにより、次のような賠償判決になりました。
AさんのBさんらに対する賠償責任の支払い命令は次のとおりです。
Cさん:1500万円
Dさん:1500万円
合計:8233万円
E社のBさんらに対する賠償責任の支払い命令は次のとおりです。
Cさん: 893万円
Dさん: 893万円
合計:4898万円
この判決内容に「おやっ?」と思う人もいるでしょう。
この判決による賠償命令では、被告のそれぞれに対し「不真正連帯債務」と少し聞き慣れない債務として言い渡されています。
今回の事故の場合、被告AさんとE社は、それぞれに債務を負っています。
過失割合を争わなかったAさんは、請求に対して100%です。
そしてE社は、人身損害に対しての60%が課せられております。
仮に、Bさんらが、Aさんの債務を免除してもE社の債務は変わりません。
また、同様にBさんらがE社に対して、自賠責保険から補償が受けられる3120万円までの支払いを受けてE社の残債務を放棄しても、Aさんに対し残りの債務は残ります。
支払いの実務に関しての示談交渉は、「乙事件」の原告Fさんへの支払いを考慮し、相互間で補償されるものと考えられます。
司法判断による判決の必要性
この事故の賠償判決により、F車の自賠責保険が使えることになることは、紛れも無い事実です。
それにより、E社からBさんらに補償がなされ、「乙事件」の判決により、Bさんらより、Fさんの補償が得られることになることになるでしょう。
つまり、賠償内容を見ることで、双方の被害者が現実的な救済を受けられるようになる、優れた司法判断が取られたことがわかりますね。
インターネット上では、被害者遺族への心無い中傷や裁判官や弁護士への批判をする人も見られますが、賠償の詳細を知った上で今一度冷静に考えていただければと思います。
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