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なぜ賠償責任ありの判決?福井の居眠り運転の対向車飛込み事故!


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だれでも加害者になる?人身事故の無過失の立証責任

福井県で起きた運転手のいねむりが原因による普通乗用車同士の正面衝突事故で、賠償責任を求める裁判結果に注目が集まっています。

死亡した被害者の遺族が本来被害者の側に損害賠償を求める、一見理不尽とも言える請求に対し、結果として被害車両の所有者の賠償責任を認める判決が出ました。
今、日本中のドライバーが注視するこのニュースの概要を確認し判決文を基に検証してみます。

ニュースメディアでは、この訴訟の判決は、「衝突された側(Fさん、F車)に過失がないともあるとも認められない」として、本来被害者であったF車の運行供用者である所有者のE社の賠償責任を認めた、一見理不尽にも思える判決です。

ところが判決文を見てみると、亡くなったGさんの遺族に対して、Fさんへの賠償金支払いも同時に命じる判決が出ています。
どうやら、ニュース記事の内容に情報が不足していることで、大きく誤認や誤解が生じているので再検証してみました。

事故の関係者について

この事故では、事故の当事者(4人)と亡くなった人の遺族(3人)、そして、クルマを所有する会社(1法人)と、多くの人が関係しています。

この事故に関係するクルマと人は以下のとおりです。
なお、アルファベット呼称については、裁判の判決文を基にしています。

・事故原因となった車両と搭乗していた人
車両:G車(所有者はGさん)
車両所有者:Gさん

運転者:Aさん(運転席、ケガ)
搭乗者:Gさん(助手席、死亡)
搭乗者:Kさん(後部座席、大ケガ)

・G車の対向車線はみ出しにより正面衝突した車両と搭乗していた人
車両:F車
車両所有者:法人E社(Fさんが代表取締役を務める会社)

運転者:Fさん(運転席、大ケガ)

・事故で亡くなったGさんの遺族(3名の法定相続人)
※以下、遺族をまとめてのときは「Bさんら」
妻:Bさん
父親:Cさん
母親:Dさん

事故発生時の状況

2012年4月当時より事故発生の現場となった国道8号福井バイパスは、追い越しや対向車線へのはみ出しが禁止された区間が続く、制限速度50km/hの見通しの良い直線道路です。

事故の直接原因は、Aさんの居眠りによりG車が対向車線へはみ出したことで起きたものです。
事故発生当時のニュース報道で確認してみたところ、G車の運転は19歳になる大学生Aさん、亡くなったGさん(G車の所有者)が助手席に搭乗中だった、ということです。

事故当時の写真を確認してみると、衝突試験の正面衝突テストと同様、お互い真正面ぶつかっています。
Fさんは、ブレーキをかけるなど「最大限の事故回避行動を行った」と考えられる状況だったと思われます。
しかし、衝突現場が見通しの良い直線道路ということもありFさんにも「前方不注意など」過失の可能性を問われる裁判になりました。

結果としてFさんの過失は、有るとも無いとも認められませんでしたが、運転者の過失が無いことを立証できなかったために「自賠法3条」の法に則り、F社の運行を供していたE社による被害者への賠償義務が認められました。

無保険の対向車に突っ込まれ被害者から一転加害者に!

この事故の訴訟では、センターラインを超えて対向車線に飛び出した対向車(以下:G車)の助手席に乗っていて死亡した人の遺族が、「自動車損害賠償保障法」(以下:自賠法)に基づき被害車両(以下:F車)側に賠償を求めたものです。

この事故が一般的な状況と異なる点は、G車の所有者が助手席に同乗していて亡くなったGさんということです。
亡くなったGさんのクルマは、家族以外の運転者に保険が効かなくなる「運転者限定」の契約だったので、他人のAさんが運転により任意保険は無保険状態になっていました。

さらに、亡くなったGさんは、クルマの所有者であり自賠責保険の保険契約者は本人であるため、自分に対してはG車の自賠責保険による対人賠償が効きません。
このことによりGさんの遺族は、弁護士へ相談してFさんの過失の有無を確認し、自賠法に基づいた運行供用者への賠償責任を求めて訴訟を行いました。

被害者なのに相手が無保険車でふんだりけったり!

「ふんだりけったり」とは、正にこういうことなのかもしれません。

賠償を求められた側のFさんは、事故当時腰の骨を折るなど重症を負い、しかも加害車両のG車が自賠責保険の傷害120万円しか使えないことから、心もとない補償内容です。
つまり「安心して補償を受けられた」と言えず補償は、完全に行われていないことが裁判からも確認されています。

もちろんFさんも治療費や後遺障害などの損害について、G車を運転していたAさんと運行供用者であった、亡くなったGさんの遺族に求めています。

この事故では、G車を運転していた大学生だけ、奇跡的に軽傷でしたから「不幸中の幸い」とは言え、FさんやGさんの遺族の胸中は複雑だったと考えられます。

つまり、Fさんは、突然降って湧いたような事故の被害者となり、大ケガをしてクルマを壊されました。(恐らく全損)
そして、任意保険が効かないG車側から、未成年のAさんや亡くなったGさんの遺族によって満足が行く補償を受けられたとは考えにくい状況です。

Fさんは、被害者として満足の行く賠償も受けられず「仕方なく自分の保険を総動員して対応したのではないか?」と考えられます。

なぜ賠償義務が生じるの?

今回の裁判の判決文を読んでみたところ、ニュース報道に間違いはないのですが、情報の不足により事実が歪曲して伝わるようなことを期待したのでは無いかと勘ぐってしまいます。

結果から言えば、自賠法3条を基に被害者への救済義務を命じたものに過ぎません。

この自賠法3条により加害者としてFさんのクルマの所有者(法人E社)に対して運行供用者責任を求め、加害者による無過失の立証の必要を求めたことにより、日本中が注目する判決になってしまいました。

自賠法3条については、自動車損害賠償保障法(自賠法)について、別のページにて詳しく解説しますが、人身事故被害者の救済を目的とした民法709条と異なる特別な法律として考えて下さい。

今回の判決は、法律の要件に則った内容で被害者遺族にとっての救済と同時に、Fさんの求める賠償請求に対しても公平な判決が出されています。
この後の記事で、事故に至った経緯などを深く掘り下げてみます。


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