だれが被害者か?福井いねむり運転衝突事故の被害者と加害者
目次
事故の被害者と加害者
福井いねむり正面衝突事故の訴訟では、非のない被害者と考えられていた相手側を死亡した人の遺族が訴えたことで、いきなり立場が逆転してしまいました。
この訴訟の判決については、インターネット上でも注目を集めさまざまな意見と批判、そして一部では心ない中傷の書き込みも見られます。
一見単純なこの正面衝突事故を複雑にしているのは、立場によって変わる加害者と被害者の関係です。
このページでは、この事故の被害者と加害者を具体的にわかりやすく解説し、裁判における人間関係をわかりやすく説明します。
事故と訴訟の関係者について
この事故と訴訟では、事故の当事者(4人)と亡くなった人の遺族(3人)、そして、クルマを所有する会社(1法人)と、多くの人が関係しています。
この事故に関係するクルマと人は以下のとおりです。
なお、アルファベット呼称については、裁判の判決文を基にしています。
・事故原因となった車両と搭乗していた人
車両:G車(所有者はGさん)
車両所有者:Gさん
運転者:Aさん(運転席、ケガ)
搭乗者:Gさん(助手席、死亡)
搭乗者:Kさん(後部座席、大ケガ)
・G車の対向車線はみ出しにより正面衝突した車両と搭乗していた人
車両:F車
車両所有者:法人E社(Fさんが代表取締役を務める会社)
運転者:Fさん(運転席、大ケガ)
・事故で亡くなったGさんの遺族(3名の法定相続人)
※以下、遺族をまとめてのときは「Bさんら」
妻:Bさん
父親:Cさん
母親:Dさん
1つの事故と立場が異なる2つの損害賠償請求の裁判
この事故には、立場が異なる原告が2つに分かれています。
しかし、ニュース報道では、その一方だけをセンセーショナルに取り上げられ、さらに情報までもが歪められているために、大きな誤解を生じています。
一方は、ニュースで注目を集めている、亡くなったGさんの遺族が事故の「複数の加害者」に損害賠償を求めた裁判です。
もう一方では、大ケガをして後遺障害を負ったFさんが、AさんとGさんの遺族Bさんらに損害賠償を求めた裁判です。
つまり、ひとつの事故で相反する立場の者が、それぞれの損害について加害者に対して賠償を求めている裁判であり、決して一方的なものではないことを踏まえて見ていくこと必要です。
被害者Gさんの遺族が責任を求めている相手は?
この事故で亡くなったGさんは、紛れも無く事故の被害者です。
しかし、その一方で大ケガをして重い後遺障害を負ったFさんと、クルマを壊されてしまったE社から見た場合、加害者としての立場も持っています。
では、Gさんに被害を与えた人はだれなのでしょう?
誰もがAさんが加害者であることは、すぐに理解できるでしょう。
しかし、今回の裁判の1つの争点として提訴したGさんの遺族Bさんらによって、Fさんのクルマを所有し、業務の一環として運転中だったFさんを使用者である、E社による運行責任による賠償責任を求めています。
Bさんらによって求められている損害賠償責任は、Fさん個人に求めているものではありません。
また、E社に対して単独で賠償請求を求めたものでもないのです。
本来もっとも責任の重いAさんと共に連帯責任を負うものとして、事故による被害者Gさんの遺族対して賠償責任を求めているのです。
まとめるとGさんの遺族Bさんらは、AさんとE社に対して、損害賠償を求めたのが1つめの請求です。
原告は、遺族のBさん、Cさん、Dさん、そして被告となっているのがG車の運転手Aさん、F車の所有者E社です。
被害者Fさんが責任を求めている相手は?
この事故で大ケガをして後遺障害を負ったFさんもまた、この事故による被害者です。
裁判上では定義されませんが、道義的に見て「真の被害者」と言って良いと考えられます。
また、Fさんとともにクルマの所有者である、E社もまた、物損事故の被害者ですがこの裁判上において、その被害をE社は求めていません。
このE社の代表取締役がFさんであり、一般的に見れば、クルマはFさんの会社ものですから、E社とFさんを同一視してしまいますが、この裁判ではその点を区別していることがポイントの一つになっています。
まとめると、Fさんは、事故の主原因となった居眠り運転をしたAさん、G車の持ち主で運行を供用していた亡Gさんの遺族Bさんらに対し、損害賠償を求めたのが2つめの請求です。
原告はFさん、被告となっているのがG車の運転手Aさん、また、一方の原告であるBさんらに対しても、亡Gさんの負っていた賠償責任が求められています。
損害賠償における被害者と加害者
こうして、具体的に詳しく訴訟の関係者を確認してみると、原告と被告がかぶっていたり、法人と個人が同一視されていたりする、歪んだ報道によって多くの人に誤解を生じさせていることが分かります。
交通事故の損害賠償においては、双方向の過失や運行にともなう、クルマの所有者、運転者に対する使用者責任など、責任の所在とその割合などを勘案する必要があります。
世間一般の「良い悪い」だけで白黒をつけるのでは、被害者の治療や損害の解決にはつながらないこともあり、今回の事故がその一例です。
被害者、加害者の責任割合をどうするか?また、どのように支払うのか?を問われた裁判でしたが、私たちには、任意保険の契約内容について考えさせられる裁判でした。
この裁判が必要になった背景や事故が起こる前の状況など、関連記事も合わせて読んでみてください。
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