店舗に飛び込んだクルマが負う対物賠償例
対物賠償の高額支払いは少ない?
対人賠償の「無制限」は、だれでも当たり前と考えますが、対物賠償について「無制限」ということにまだ疑問を持つ人がいるようです。
実際、対物賠償事故の高額支払いの判例が少ないために、小さな乗用車では、「高額の対物賠償になることはないだろう」と、たかをくくる人も少なくありません。
対物賠償の高額支払いは、実のところかなりたくさんあるのですが、対人賠償と違い訴訟に持ち込まれることが少ないので、表立って公表されないのです。
対物賠償は、実損害を支払うのが基本です。
つまり、慰謝料が無く利益損失の考え方も異なります。
過失割合が争点となることはありますが、実損害は顕在化しているのであまり争われることが無いのです。
強いて言えば、車両全損時や破損した製品など、時価額で査定されるために、そういった部分で多少交渉が滞ることがあっても、訴訟にまで発展することは稀なケースです。
実際、事故で最も保険金が多く支払われているのが、車両保険と対物賠償保険です。
2013年の統計を見ると対物賠償による保険金支払総額は、約6802億円、車両保険が6817億円でした。
この対物賠償が高額になる理由のひとつが、利益損害の補償です。
対物賠償では物の実損害の他に、店舗や事業用のトラックやバスを壊したときに発生する、利益の損害も補償する必要があるからです。
休業損害によって損害額が上がる
道路沿いにある店舗に「クルマが突っ込んだ」と言うニュースは、年間を通してみると割合に多くある話です。
ローカルニュースでは、よく目にしますし、ニュースにもならない駐車場からのペダルの操作ミスなどで、店舗のショーウインドウに突っ込む事故など、毎日のように起きています。
事故で、こうしたお店に被害を与えた場合、必ずと言って考慮されるのが「休業損害補償」です。
破損の状況やお店の種類にもよりますが、修理作業中に別のトラブルを避けるためにも、臨時休業していただき修理を進めることが一般的です。
臨時休業するということは、その期間被害者のお店側では、営業利益を出すことができなくなります。
そこで、お店を開けていれば当然に発生する利益の機会損失を補償する必要がでてきます。
お店を閉めている日数が長いほど損害が拡大するので、1日も早く損害内容を確定し修理作業に取り掛かることが懸命な対応となってきます。
乗用車とトラックの事故例
Aさんが乗用車の運転中ハンドル操作を誤り交差点の角地にあるコンビニエンスストアに突っ込んでしまいました。
幸い人身事故にはいたりませんでしたが、お店のショーウインドウは大きく壊れ、店内の棚も倒れるほど破壊されています。
商品の多くもキズ付いてしまい商品価値が失われています。
また、営業を継続できないことから直接被害がないものでも、実質的に販売ができない状態となるため、休業損害にて総合的に補償を検討する必要があります。
この事故による加害者は、Aさんが100%過失となります。
コンビニエンスストアのフランチャイズオーナーであるBさんが、直接の被害者となります。
事故の損害は次のとおりです。
Aさん乗用車の修理費用:80万円
Bさん店舗の修理費用:630万円
Bさん店舗の商品損害:80万円
Bさん店舗の休業損害:1200万円
事故例の損害算定と解説
先ず損害額を整理してみます。
Aさんの損害:修理費80万円
Bさんの損害:修理費800万円+商品80万円+休業損害1200万円=合計2080万円
Aさんは保険会社を通じ、以下の内容で賠償金を支払います。
Aさんの賠償額:2080万円
Aさんは車両保険に加入していたので、この事故により自己負担を負うことはありませんでした。
なお今回の事故では、Bさんの店舗の修理見積もりなどもスムーズに行われているため、修理を事故発生より12日間で済ませることができました。
工期が短く済んだので休業損害は、これでも最小限と考えられます。
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