示談した後に出てきた後遺症の賠償請求はできないの?
示談の前に意味を理解しておく
一般的に、人身事故の示談成立後の請求は認められません。
示談書を取り交わす目的は、通常一切の請求を認めない旨を約束することなので、保険会社が用意する示談書を見ると、必ず以下の内容とほぼ同等の文言が記載されているはずです。
「本件に関して今後いかなる事情が発生しても、双方ともに裁判の有無を問わず一切異議申し立て、請求を行わないことを誓約します。」
保険会社のサンプルに近い一文なのでとても固い表現ですが、「示談後はお互い一切異議申し立てをせず、金品の請求を行わない」という内容の約束です。
ここで理解しておきたいのは、人身事故被害者は安易に示談を受け入れることなく、示談書の作成前に今後発生するかもしれない「後遺障害」について、別途協議を行う旨を示談の内容に織り込む様に求めることが必要です。
例:本件交通事故により後遺障害が生じた場合、別途事故当事者双方で協議を行う。
文言について特段の決まりはありませんが、示談書に以上のような一文を入れるだけで、後遺障害が生じたとき交渉が可能になります。
示談後でも正統な理由があれば認められることもある
民事賠償の示談は、すべてにおいて強固な拘束力を持つわけではありません。
現実に裁判所では、いくつかの判例においても示談成立後の後遺障害請求を認める判決を出しています。
これは、人身事故の被害者が示談の際に予想していた損害を超えた、後の後遺障害による損害や再手術などの治療について、示談成立の時点では予想がつかず、およそその賠償請求権まで放棄したと理解できないからです。
つまり、「示談書の取り交わし時点で、未来の後遺障害発生などを予測することが困難だった」ということを訴え示すことができれば後から請求することもできる、という見解が判例によって示されています。
もちろん、その示談の時点で後遺障害による症状固定により、後遺障害保険金や逸失利益について示談内容に盛り込まれているようなら、後にその内容をくつがえすには、相当の理由が必要になって来ることは言うまでもありません。
示談は症状の固定後が良い
マナーのない保険会社の担当者が示談を急くような行動を示すことがあるようです。
しかし、人身事故の被害者は、基本前提として人身被害箇所の治療が「これ以上続けても症状の改善が認められない」とされる、症状固定の状態になってから後遺障害の等級認定を求めていく姿勢で示談交渉に臨んだほうが良いでしょう。
最初から、症状が固定するまでに治療を続ける旨を、被害者が直接事故担当者に伝えておくことをおすすめします。
仮に、治療期間が長期に及び保険会社が示談を求めてくる場合は、先の「後遺障害については別途協議する」という旨の一文を入れた内容で示談することが適切になります。
治療期間が長期に及ぶと人身事故の被害者が示談に応じず「ごねている」と言った、失礼な物言いをする人達もいるようですが、それは、被害者の身体に受けた障害の痛みを心から理解していない人たちの偏った考えです。
治療や症状固定、後遺障害の申請については医師の指示を仰ぎ、相手保険会社とは厳しい姿勢で示談の場に臨みましょう。
示談前の交渉が重要、場合によっては弁護士に相談を
以上のことから、示談後でも条件が整えば後遺障害の請求などは認められています。
しかし、手続きとしては、示談前に交渉しておくことで後に面倒な手続きをする必要もなく、後遺障害保険金の請求や後遺障害と等級の認定後に示談することもできます。
なお、100対0の事故で相手との交渉時に相談先がない、また、過失割合が生じた事故で、自分の保険会社から、相手との示談に折り合いをつけるよう勧められているような場合、弁護士への相談も考慮してみてください。
実のところ、保険会社の事故担当者は、保険金支払いの内容や事故解決までの期間などが評価対象となるため、示談を急がせる傾向にあるのも事実です。
まさかと思われるでしょうが、事故当事者の保険会社同士での交渉では、お互いの歩み寄りで双方の保険金支払いを最少範囲でまとめる傾向にあります。
被害者のために、高い慰謝料や補償を獲得するために交渉はしてくれません。
その点弁護士は、依頼者の利益を最優先に対応してもらえるので、示談交渉時にもより良い解決策を持って相手との交渉にあたってもらえます。
弁護士費用特約を付けておけば、万一の際の相談費用も対応できますので、保険加入の際に付帯しておくことをオススメします。
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