全損時の保険会社の対応を知って示談交渉に備える
全損は物損事故の賠償請求額の上限
物損事故で壊れてしまったクルマや物の賠償は、通常、修理費用や部品の交換費用を支払い対応します。
しかし、修理費用が壊してしまった製品の時価の評価額を超える場合は、その時価を賠償額の上限として考えます。
たとえば、被害を受けたクルマが比較的年式の古いモノで、既に市場価値が低くなっているような場合、時価額を超える修理費用は負担されなくなります。
しかし、時価額が低いからといってクルマや物を壊された人は、修理代をもらえずに一方的に提示された時価額相当の金額を受け取れば、納得をできるものでしょうか?
仮に、その当事者があなたならどうでしょう、修理費より「クルマに価値がないなら仕方がない」と提示された時価額に納得して示談ができるでしょうか?
一方的な時価額の提案
一般的に保険会社の事故担当部署では、慣習で「レッドブック」を用いた時価額の提示を行っています。
もちろん、初度登録から1年未満の新車同様のクルマや、逆に8年以上経過している少し古いクルマでは、レッドブックだけでは時価額を算出できません。
その場合、税申告などに用いる「減価償却定率法」を利用して、時価額を提案しています。
提示額に納得できるならその提示金額での示談を進めることでもよいでしょう。
しかし、その前にこの記事を最後まで読んでみて、一考してみることをオススメします。
一般的に保険会社から提案される全損の時価評価は、客観性に乏しく保険会社にとって都合の良い内容が多くなっています。
敵を知る?事故担当者は賠償額を抑えることも仕事
敵と言ってしまうと語弊がありますが、交渉相手となる保険会社の社内では、事故による保険金支払いのことを日常的に「ロス」と呼んでいます。
つまり、「損失」と言う意味ですから保険会社がロスを抑えてくることは、当然の姿勢です。
ですから、交渉次第でロスを抑えることができる賠償保険金を、要求もして来ない相手にできるだけ多く支払う甘い保険会社などひとつもありません。
現在の損害保険会社は、保険市場においてもっとも大きな自動車保険商品の顧客の争奪戦のさなかにあり、保険料の価格競争は契約者も知るところです。
既に、消耗戦の域に入って来た各社間の競争の中で、保険金支払いと言うロスを抑えることは大命題のひとつであり、保険会社の大小にかかわらず事故担当者に要求されています。
もちろん賠償保険金を考慮する事故担当者には、示談交渉を上手くまとめつつロスを抑えると言う、相反する能力が要求されるわけですから並みの相手ではありません。
全損とする時価額評価の根拠を保険会社から示してもらうことはもちろんですが、それを反証するための材料を用意して交渉に臨む姿勢が必要です。
損害賠償請求は再調達価格
本来、全損に含まれる損害金額には、同等の自動車を再取得するために必要な賠償金が提示されてしかりです。
しかし、未だに保険会社からの示談内容では、車両の全損価格のみを提示し、再調達のための賠償金を提示してくる保険会社はわずかです。
全損でクルマを失った被害者は、当然に自動車を購入するため登録諸費用、全損車両を廃車するために要した費用など、車両本体価格以外に支出することになるでしょう。
物損事故では、被害者が受けた経済的損失を確実にまかなうことが一般化されつつあります。
したがって全損時には、同等のクルマの再調達にかかる費用を賠償額とすることが妥当と考えられ、当然に買い替えのための諸費用も賠償金に含まれると考えます。
実際に訴訟を起こし法廷の場で「全損」の内容について争えば、事故によるクルマの損失を補填できる金額、つまり「同等の車両の再取得費用が賠償金として適当である」という見解になっています。
近年は、多くの判例で車両本体の時価というだけでなく、再取得時の諸費用と全損車両の廃車費用が認められています。
全損の損害賠償金として認められる費用
全損時には、代わりのクルマを再調達するために、次の内容が損害賠償額として認められることが、判例から見て一般化してきています。
・自動車取得税
・登録・車庫証明の法定費用
・検査登録手続代行費用
・車庫証明手続代行費用(合理的な範囲内)
・納車費用(合理的な範囲内)
・上記諸費用にかかる消費税
・事故車の廃車・解体費用と消費税
物損の損害賠償では原状回復としますので、全損の場合には、同等のクルマを再調達するためにかかる購入費用が基本となります。
また、原状回復がなされるまでに必要な代車費用+現車の廃車費用+事故車のレッカー代も賠償請求の対象となることは、言うまでもありません。
同等品の再調達には、中古車販売店などの協力による見積書など、費用の裏付けとなる書類も必要になるので、購入店などに協力を仰いで取り組んで下さい。
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