対物損害の賠償金額はどうやって算出している?
物損事故の賠償について
他人が所有する物を壊す物損事故では、修理や交換費用・その他の利益損害を賠償金として支払うことで解決を図ります。
物損事故の損害は、クルマ同士の損害から、道路周辺の建造物から店舗・住宅建物に至るあらゆる物の直接損害から、修理に要する日数から生じる利益損失の補償などがあります。
この物損事故の賠償金支払いは、通常、損害査定を行い対物賠償保険にてお互いが過失割合に応じ、相互に賠償金を支払うようになります。
対物賠償保険は、任意の自動車保険に付帯する基本補償の一つです。
未加入の場合は、当然に賠償金支払いは自己負担となるので、自動車保険にて備えることが一般的です。
対物損害金額の算定の対象
対物賠償の考え方は「実損填補」が基本的な考え方となります。
人身事故の賠償と違って慰謝料の支払いはありません。
また、事故の損害賠償金額は、責任に応じた過失割合により算出された内容にて、支払いが行われます。
賠償金の算定では、事故により直接被害を受けた物の修理交換に要する費用、修理期間中の代車などの費用をそれぞれの専門の業者・担当者によって、査定見積もりが行われます。
クルマに関わる直接損害
クルマの修理費用、
代替費用、
格落ち損害(評価損)、
修理期間中の代車費用、
レッカー車や清掃などの費用、
クルマに乗せていて事故により破損した物
(アクセサリーや時計、洋服など身につけていたものから、車内・トランク内に保管されていたもの)
なお、格落ち損害については、すべてのケースで認められるものではありません。
少なくとも新車登録から3年以内程度までのクルマでクルマの破損状況が、いわゆる中古車査定を行った場合に「修復歴あり」と認められ減点を根拠となっています。
しかし、実際の格落ち損を損害賠償として保険会社と交渉するためには、「一般財団法人 日本自動車査定協会」に修理後にクルマを持ち込み、客観的な鑑定評価を行う必要があります。
対物賠償における修理費に加算する事故減価額は、日本自動車査定協会の発行する「事故減価額証明書」が客観的な証明となるでしょう。
クルマそのものが全損判定になる基準は、その時点での時価額評価との対比により決められます。
修理損害金額が時価額を超えるようなら、「全損」として時価額相当が賠償金として支払われます。
時価額は、同様に車に載せていた物品にも適用されます。
概ね新品購入時の価格を根拠に、償却年数に応じた時価額を賠償金とします。
クルマやその他の財物については、概ね購入から1年以内(車両の場合は登録年度内)が再調達価格で交渉可能な範囲です。
それを超えると、時価額評価で賠償交渉となることが多いようでが、民事の賠償はそれぞれ個別に行われますので、過失割合や事故の状況でそれぞれ違いが出てきます。
なお、全損になった被害者のクルマの修理費について、時価額相当を超えた金額を補償する「対物超過修理費用補償特約」なども普及しています。
クルマに関わる間接的に生じる利益損害など
バスやタクシーなどの旅客自動車の場合、修理期間中の休車損害が発生することがあります。
また、同様に事業用貨物自動車でも休車損害が発生することもあるでしょう。
いずれの場合も、クルマを修理することにより営業損害の発生が実態としてあることが条件となります。
なお、修理期間中に法定点検時期となる場合でも、法定点検費用などは原則として認められません。
同様に、クルマの維持経費分は、休車損害の範囲には認められません。
休車損害は、1日ごとの営業利益から維持経費差引後の実利益のみが対象になります。
1カ月間の稼動日数が考慮されますが、繁忙期の稼働率など実態に即した内容で交渉することが一般的です。
建物などの直接損害
交通事故により、家屋や店舗などにクルマが飛び込んでしまった場合では、必然として修理費用や店舗の休業損害などが認められます。
なお、店舗の場合、営業が止まることにより商品価値の低下やロスの発生(食品等)、従業員の給与なども営業実態に即して、交渉する必要があります。
しかし、お店を休んだことにより支出しなかった経費は、損害として認められません。
なお、角地などで営業している店舗にクルマが飛び込んだことで、営業再開後に客数減少が発生する可能性があるなど、未来の不確定要素は損害として認められません。
実態として事故後にそのような状態となっても、その状況は立地による影響も考慮されるべきで、加害者の事故だけが理由にはならないからです。
クルマ同士の損害の過失相殺
クルマ同士の事故で過失割合が発生している場合は、お互いの修理費については、過失責任分を相手に支払うことになります。
なお、店舗の修理費用などは、事故の加害車両それぞれが過失割合に応じて賠償責任を分担します。
しかし、被害者からの交渉窓口については、それぞれのクルマではなく過失割合の高いクルマの保険会社が対応することが一般的となっています。
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