全損時に用いる時価額のさまざま算定基準
全損時は時価額の基準に注意する
物損事故にてクルマが破損した場合の修理の賠償には「全損」と呼ばれる上限があります。
クルマの価値は、新車登録時から毎月目減りしてゆきますから、修理が可能でもその時点のクルマの「時価」を超えるようなら、修理をしないで時価を損害金額として賠償が行われます。
このことを「全損扱い」と呼び、保険会社は時価額を評価して全損の賠償額を算出し、被害者との示談交渉に臨みます。
時価額の算出は、全損車両の初度登録からの経過年数を基に、いくつかの基準を用いることができます。
このページでは、さまざまな時価額算出について知り、一歩的な全損扱いの示談交渉時に少しでも役立つ知識を提供しています。
時価額の算定基準
時価額の算定には、初度登録年からの経過年数に応じて、いくつかの方法を利用して算出します。
1、初度登録年月日より1年間以内の高年式のクルマの場合。
・税申告などに用いる「減価償却定率法」を利用して、経過年数に応じた時価額を算出します。
2、初度登録年月より1年経過後から8年未満のクルマの時価額評価は、以下の通りいくつかの方法があります。
・レッドブック(※)による中古車小売価格をもとに時価額を算出する。
・日本自動車査定協会が監修発行している査定基準価格をもとに算出する。
・カーセンサー、Gooなどの有力な中古車情報から、実際の市場価格をもとに算出する。
3、初度登録年月から8年以上を経過したクルマの場合
・税申告などに用いる「減価償却定率法」の償却期間後の残価として新車車両価格の10%として算出する。
・実際の市場価格が反映されている、カーセンサー、Gooなどの有力な中古車情報を用いて、市場価格を再調達のための時価額として算出する。
※:オートガイド社が発行する中古車市場価格の月刊情報誌
保険会社が基準として用いるレッドブックとは?
このように被害車両の年式によって時価額を求める方法はいくつかあります。
中でも事故の実数としてもっとも多い、初度登録より1年以上8年未満のクルマの算出では、多くの損保会社が「レッドブック」の中古車小売価格を基準にしています。
レッドブックは、もっとも古くから多くの自動車関連業者の間で中古車の価格を知るのに利用されています。
50年間の発行実績は、日本査定協会による査定制度や中古車オークションシステム、買取専門店などが普及する以前から、中古自動車の価格のベンチマークとしての権威を確立しています。
また、多くの判例においても、その実績から慣習として時価額の目安のひとつとして認められてきています。
しかしレッドブックは、中古車の売買を行うために「下取り査定価格や業者間の売買価格に的を絞った」中古車価格のガイドブックです。
レッドブックに出ている中古車小売価格は、業者が査定や業者間取引で仕入れる際、店頭販売価格の目安を知るために利用する価格です。
したがって、その価格は店頭小売の平均価格ではなく「店頭小売の最低価格」が表示されていることが通常です。
賠償交渉の場においては、保険会社の一方的な時価額提示の押し付けとも見られる「強硬な示談」も横行しているので、十分に気をつける必要があります。
損害の立証と賠償請求
自動車事故の被害者は、本来過失の有無に関わらず、損害内容の立証と賠償請求を自ら行う必要があります。
このことを逆にとらえれば、保険会社に損害の内容と賠償金額の算出を任せっきりにしていては、満足の行く賠償額には到底及ばない可能性があります。
大変失礼な物言いになってしまうかもしれませんが、よく聞く話のひとつに「被害者だから相手が動くべき」と言う人が実に多いということです。
加害者が交通事故を起こしたために被害を受けたのだから、同等のクルマの提供や再調達が可能な補償を望んでいても、相手任せで期待しても望みはかないません。
相手方の保険会社は、最低限の賠償内容で示談解決に臨んで来ると覚悟しましょう。
被害者も迎え撃つ準備をしておく、また先制攻撃として損害賠償請求を書面で通知する、くらいでちょうど良いのです。
次のページでは、「全損時の保険会社の対応を知って示談交渉に備える」として、交渉に最低限必要な基礎知識をまとめましたので、合わせて読んでみてください。
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