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危険運転過失致死傷罪による厳罰と適用条件


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危険運転過失致死傷罪が作られた背景

2001年12月に施行された「危険運転過失致死傷罪」が施行される以前、自動車事故に対する刑法は、多くのケースで業務上過失致死傷罪を元にした「自動車運転過失致死傷罪」を適用していました。
これは、交通事故の本質には加害者の故意がない、と言うことを前提としたことによるものだからです。

しかし、従来の交通事故加害者に適用されていた業務上過失致死傷罪では、悪質な交通違反に対しての刑罰の考慮がほとんどされていません。

例えば、飲酒や危険ドラッグなどの影響により正常にクルマを操作できない状況で運転をして、他の歩行者や他のクルマを巻き込んだ事故を起こし、深刻な大事故となったようなケースです。

実際、2000年4月に神奈川県の座間南林間線の小池大橋上で起こった交通事故では、検問を突破し逃走中の建設作業員の男が運転するクルマが、歩道上を歩いていた大学生2人を巻き込んで死亡させるに至った事故がありました。
この事故の遺族の「悪質な運転で死亡事故を起こしながら10年以下の懲役となる窃盗罪より軽い、5年以下の懲役の業務上過失致死傷罪が適用になるのはおかしい」として、署名活動が開始されました。
この活動では、前年に発生した東名高速飲酒運転事故の遺族も運動に参加するカタチとなり、37万員以上の署名が集まることとなりました。

被害者遺族を中心に「悪質な運転原因に対して厳罰を望む」署名運動により世論の声も高まり、最高刑を懲役15年とした危険運転過失致死傷罪が、施行されることになります。
次に「危険運転過失致死傷罪」についての詳細を確認しておきましょう。

危険運転過失致死傷罪とは

「危険運転過失致死傷罪」では、次の5つの危険運転行為により人を死傷させた時に適用される刑法です。

・酩酊運転致死傷罪
酩酊運転とは、「飲酒行為や薬物の影響によって、正常な運転が困難な状況でクルマを走らせる」ことを指します。

薬物には、麻薬取締法に指定される薬物から、昨今、社会問題化が著しい「危険ドラッグ」、花粉症などや感冒薬にも含まれる成分(抗ヒスタミン薬)、向精神薬などまで含まれます。

・制御困難運転致死傷罪
制御困難運転とは、「クルマを制御不能なスピードで走行させる」ことを指します。

道路には種類があり、それぞれに制限速度が設けられていますが、その「制限速度」を著しく超過した(50km/h以上)状況にて適用が検討されます。

・未熟運転致死傷罪
未熟運転とは、「クルマを正しくコントロールする技能を有せずに走行する」ことを指しています。

したがって、一般に運転免許証を所有する人はもちろん、過去に運転免許証を保有し一定レベルで運転する技能を有している人は、運転免許証を失効していても、この「未熟運転」にはあたりません。
当然に運転に慣れていない初心者ドライバーでも、運転技能を持ち合わせていると考えられるので「未熟運転」にはなりません。

クルマの運転操作の基本となるハンドルやペダル操作などを正しく理解していない状態で運転することを指すと考えます。

・妨害運転致死傷罪
妨害運転とは、「自分以外の歩行者やクルマに対し妨害を目的として、近づき、危険な影響を与える運転を高いスピードで運転する」ことを指します。

少々分かり難いのですが、「はばよせ」や「あおり」行為などがそれに該当し、進路を塞いで急ブレーキをかける行為や、急激な進路変更などもそれにあたります。
一般的に見て高いスピードとありますが、相対的状況が勘案されるので20km/hぐらいのスピードでも適用対象になることもあります。

・信号無視運転致死傷罪
信号無視運転とは、「進行方向の赤信号の指示に従わず、他の人やクルマの往来に危険を及ぼすスピードでクルマを運転する」ことを指しています。

コレは、誰が考えてもわかる通りで、通常進行方向の信号が青であれば、交差する道路の信号機は赤であり、交差点内に進行を妨げる形で進入してくることは予想できず、回避困難です。
さらに、予期せぬ方向から高い速度で衝突された場合、身体に生じるダメージは相当に重くなることが考えられます。

危険運転過失致死傷罪は適用がむずかしい

先に示した、5つの適用条件を見てみると、いずれも「危険運転状態であったか?」が刑法適用のポイントになっています。
そのため事故によっては立証が困難なケースもあり、危険運転過失致死傷罪の適用が難しい大事故も多く存在しました。

例えば飲酒運転により、酩酊状態であったか?と言う立証は、事故発生時の運転者の状態を指しています。
しかし、このことにより「ひき逃げ」による逃げ得を誘発するという、皮肉な結果をもたらすきっかけにも繋がります。

又、制御困難運転、未熟運転などは、個人差もあり道路や天候の状態によって違った結果に繋がるので、すべてが同じ処罰とならないこともありました。

こうしたことから、「自動車運転死傷行為処罰法」が作られることになります。


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