自動車保険の弁護士費用特約は必要?本当の使い方と損保18社の違いを比較!
自動車保険に付帯される人気の特約の一つに「弁護士費用特約」があり、その付保率は個人契約の内約7割近くまで普及しています。
それほどまでに人気の弁護士費用特約ですが、実際に使う人はまれで、ひんぱんに事故が起きている割には、「弁護士費用特約を使ってみた!」という話をあまり聞かないのも現実です。
付保率が高いのに使われない「弁護士費用特約」は、本当に必要な補償なのか? という疑問の声もここに来て増えてきており、そうした質問もよく受けるようになりました。
そこで、今回の記事では、はじめに弁護士費用特約が必要な事故と目的、本当の使い方について、わかりやすく解説して参ります。
また、損保18社の異なる補償範囲から保険料の違いを比較してみました。代理店型とダイレクト型の自動車保険損保18社の弁護士費用特約を約款まで徹底検証しています。(2017年5月現在)
最後に弁護士費用特約以外の補償でもできる、もらい事故に有効で費用対効果の高い自動車保険による自衛手段を考察しご紹介します。自動車保険を選ぶ際にお役立て下さい
目次
弁護士が必要な事故と弁護士費用特約の必要性
示談交渉付きの自動車保険に入っているのに「弁護士が必要になる事故もある」と聞くと「なぜ?」と思う人が多いと思います。
無過失の被害事故は示談交渉できない!
現在、個人契約者向け販売されている自動車保険には、対人対物賠償保険の示談交渉サービスが付いています。しかし、示談交渉サービスは、あくまで加害者としてわずかでも過失が無い限り、保険会社が動くことができません。
その理由は、過失ゼロの被害事故の場合、保険会社が加害者との示談交渉を行なうことは「非弁行為」となり、法律により禁じられているからです。(弁護士法72条)
したがって無過失のもらい事故などの場合、加害者への賠償請求などの交渉は自分で行なわなければなりません。また、自身に過失が有っても相手への対人賠償請求の内容に不服がある場合、保険会社任せにできないこともあるでしょう。
そのような場合、果たして自分だけで加害者や加害者の保険会社を相手に、賠償請求交渉をうまく進めることができるでしょうか? 多くの場合、不安にかられながら相手との交渉テーブルに着かなければなりません。
このような状況をはじめ、被害者として相手に賠償を求める際、交渉のプロである弁護士の出番となります。
保険会社に示談を任せられない場合、弁護士への依頼を検討する
いずれにしても自動車事故で被害者となった場合、弁護士に依頼する方が賠償請求の交渉を有利に進めることができます。
今後、事故で被害を受けた際は「弁護士費用特約」を積極的に活用し弁護士に相談してみると良いでしょう。
交通事故で弁護士を必要とするような事案は?
② 過失割合のある事故で物損や人身被害の賠償内容に不服がある
③ 保険会社が相手方と同一のため、示談交渉の内容に不安がある
いずれの事故でも相手加害者が任意保険に加入していれば、相手の保険会社から損害賠償について示談交渉が進められます。
現在登録されている車の約9割が任意の自動車保険か自動車共済に加入しており、無保険車との事故に遭遇する確率は1割り程度と思われます。
交通事故の中でも被害者のほとんどが無過失となる追突事故は、事故の中で約3割を占めるほど数多く発生しています。
この追突事故のほとんどが①に該当し、弁護士費用特約を活用し弁護士を立てて賠償を求めていくことを考慮しても良い事案です。
また、①をはじめ、②、③ともに、死亡や後遺障害が伴う人身被害事故の場合、相手方保険会社の申し出による賠償内容をうのみにして示談交渉に応じることは避け、弁護士を立てて交渉することが賢明です。
弁護士費用特約の必要性
弁護士費用特約は、もらい事故などで被害者になったとき、相手や相手方の保険会社との交渉を弁護士に依頼した際に生じる費用を補償する特約です。
逆に弁護士費用特約が無い場合、無過失事故で重大な被害を負い、弁護士に相談依頼する際には、賠償請求額に相応する弁護士費用を自身で負担する必要があります。
もちろん、自身だけで賠償請求を行なうこともできますが、後遺障害などが伴う人身被害の賠償請求は、被害見積もりなど法的な根拠を示す必要があり、弁護士に依頼せずに一般の人が行なうことは大変難しくなります。
年間保険料の負担はわずかに増えますが、事故で被害者になったときのことを考慮すれば、それほど高額な負担にはならないでしょう。
また、この特約は、運転者限定や年齢条件に左右されず、配偶者、同居の家族、別居の未婚の子、そして被保険自動車に同乗中の人まで補償の対象になります。
弁護士費用特約を使うメリットと本当の使い方
まず弁護士費用特約があることによる、被害者のメリットを見てみましょう。
弁護士費用特約を使うメリット
物損や人身事故で被害者になった場合でも、損害額が小さいと弁護士への依頼費用だけで回収できる賠償額を上回り、結果的に費用倒れにもなりかねません。
そのような場合でも弁護士費用特約が付いていれば、弁護士への相談料から報酬までそのほとんどがカバーされるので安心です。
今回の記事に伴い、国内で自動車保険を取り扱う損保18社の補償内容を確認したところ、弁護士費用の保険金は、18社すべて300万円が上限でした。
損害賠償請求で弁護士を使うメリットは、他にもあります。
なんと、相手方保険会社の補償提示額と比べて、賠償金額が上がることが一般的です。
その理由は、損害額の算定に使う計算基準が違うことから生じています。
通常保険会社は、自賠責基準か任意保険基準を使い賠償金額を算定します。それに対し弁護士は、弁護士、裁判基準で計算し、もっとも高く時勢に沿った賠償金額が算定されます。
場合によっては倍以上も算定額の差が開くこともあるので、見逃せないポイントです。仮に300万円を超える弁護士費用がかかる場合でも、弁護士に交渉を依頼するべき、とアドバイスする理由はここにあります。
また、弁護士費用特約があることで、事故当初から弁護士への相談から弁護人として交渉を依頼すれば、事故被害者は不慣れな交渉ごとに気を煩わされること無く、ストレスフリーで生活を継続維持できます。
無過失事故で自分の保険は使いたくない!という方もいらっしゃいますが、賠償保険を使わない人身傷害補償の利用は、等級ダウンにつながりません。
また、同様に車両保険にも「車両無過失事故に関する特約」が付帯されている契約なら、ノーカウント事故となり、翌年の等級ダウンによる保険料アップはありません。
弁護士費用特約も使用することによる等級ダウンはないので、自分の保険は無傷(等級ダウンなし)で、損害を解消することが可能です。
保険会社が示談交渉できない場合でも、弁護士に交渉の依頼が容易にできる「弁護士費用特約」の加入メリットは大きいと考えましょう。
弁護士費用特約の本当の使い方
弁護士費用特約の解説では、わかりやすくするため無過失の被害事故を例に弁護士依頼について述べていますが、実のところ過失割合の生じている事故においても、必要に応じて保険会社に相談の上、弁護士の介入が可能です。
近年は、物損事故においても、代車費用も含めた過失割合に応じた被害額請求の例も増えてきており、後遺障害が伴う人身事故だけに留まらなくなってきました。
弁護士費用特約を使う際は、事後承諾にならないように気を付けましょう。交通事故に遭い被害者となってしまった場合、速やかに自分の保険会社に連絡し、「弁護士への依頼を希望する旨」を伝え、了承を取り付けます。
依頼する弁護士は、保険会社が斡旋する弁護士という選択もありますが、ネットで交通事故の賠償請求訴訟に詳しく実績のある弁護士を探す方法、日弁連のホームページから法律相談や地域で活躍する弁護士を探すこともできます。
自分や家族に被害事故が生じた場合、保険会社に連絡し了解を取り付けてから、弁護士への法律相談からはじめましょう。
着手金や成功報酬など弁護士費用の目安は?
弁護士に支払う費用の名目は多岐にわたりますが、中でも大半を占めるのが着手金と報酬金です。
弁護士費用の目安はいくらくらい?
弁護士費用は高い、という漠然としたイメージはありますが、実のところ報酬の目安について、日弁連などで取り決めがあるわけではありません。
弁護士費用の大半を占める着手金と報酬金は、完全なオープンプライスとなっており弁護士が個々に決めても良いとされています。つまり特別に法外な額で無い限り、弁護士の自由裁量というわけです。
ちなみに弁護士費用の具体例ですが、日本弁護士連合会(以下:日弁連)の調査アンケートを見たところ、交通事故被害者からの依頼による1,000万円の賠償請求訴訟のケーススタディがありました。
着手金30万円前後と回答した弁護士が50%近くを占め、50万円前後までとの回答を合わせると、約95%に達します。また、報酬金については、50万円前後から100万円前後まで幅広く分散しており、約97%が回答しています。
したがって、仮に一番高い着手金と報酬金でも「50万円+100万円」となり、概ね高くとも150万円程度と考えることができます。こうした金額幅が開く理由は、相手方保険会社との交渉がどの程度難航するか?など考慮される内容により変わるものと考えられます。
もちろん、人身事故の後遺障害や死亡時の賠償請求では、1,000万円程度では収まらず、さらに高い弁護士費用も予想されます。
300万円を超える弁護士費用については、賠償金額として訴訟で勝ち取った中から成功報酬の一部として後払いになることが一般的ですから、費用負担についての心配は無いと考えられます。
(引用元:日弁連調査、市民のための弁護士報酬の目安[2008アンケート結果]より)
こんなに違う!自動車保険18社の弁護士費用特約を徹底比較!
自動車保険取り扱いの損保各社では、すでに弁護士費用特約が提供されていますが、保険会社により補償範囲が異なるなど明らかな違いが見られます。
保険料も各社異なりますが保険料については、対人対物の賠償保険や人身傷害保険、車両保険との兼ね合いから、一概に「弁護士費用特約」だけを抽出して単独比較しても意味が無く、最終的には保険料支払い全体を比較して選ぶようにして下さい。
したがって、この表に記載した弁護士費用特約の保険料は、参考程度にご覧下さい。
自動車保険18社の弁護士費用特約の比較表
日常生活の事故にも対応可能な損保
特筆すべきポイントとして、まず、日常生活で起こりうる歩行中や自転車搭乗中の被害事故などまでカバーできる「弁護士費用特約」を提供する、ダイレクト損保2社、代理店型損保3社があるということです。
遊び盛りのお子さんやお年寄りのいるご家庭なら、当然に日常生活でも起こりうる様々な事故にも対応可能な「弁護士費用特約」を提供する損保をおすすめします。
ちなみにダイレクト自動車保険販売トップのソニー損保は、自動車事故と日常生活事故を分けて加入できます。チューリッヒ保険は、一括加入になりますがその分保険料を割安に設定されています。
ソニー損保とチューリッヒ保険は、保険料もダイレクト損保の中で同等水準にあるため、見積もり比較しなければ、総支払い金額はどちらが安いかわかりません。
また、代理店型損保3社は、三井住友海上火災、共栄火災海上、AIU保険の3社が日常生活の被害事故でも弁護士費用特約を使えます。
1つずつ集めるのが面倒な人は、自動車保険の一括見積もりを利用するのも一案です。
自動車事故の「◎」と「○」の違いについて
表の下にも記載していますが、「◎」は、該当する保険会社の自動車保険約款を確認し、「被保険自動車搭乗中以外の自動車事故も対象事故とする旨」の記載を確認したものです。
それ以外の「○」については、約款上の記載で「被保険自動車搭乗中以外の自動車事故」について、対象事故とする旨が不明確な表記でした。弁護士費用特約が使えるか否かについては、個別に問い合わせる必要があるでしょう。
歩行中の自動車事故など、通勤通学時のリスクなども考慮したい人は、迷わず「◎」の付いた損保、または、日常生活事故もカバーしている損保を選びましょう。
ちなみに調査した代理店型損保はすべて「◎」で、歩行中の自動車事故にも対応します。
特約保険料が不明な理由
当サイトでは、保険料試算を一括見積もり比較サイトや代理店への直接依頼、WEBサイトの見積もりシミュレーターなどを使って算出しています。
今回の調査では、弁護士費用特約の個別の特約保険料については、あまり重要ではないため参考程度としており、期日までに回答が得られなかった3社については、「不明」としています。
保険料については、必要補償を得るための総保険料が重要であり、特約ごとの保険料はあまり重視されないよう気を付けて下さい。
弁護士を使っても「無い相手からは取れない!」という現実
さて、ここまで書いてきた内容から、弁護士費用特約を付けておけば、もらい事故の被害者になっても賠償請求が容易だと考えられる方も多いと思います。
しかし、現実には、任意の自動車保険、自動車共済に加入しないで運転されている車が全登録車両の約1割を占める現実の前では、弁護士費用特約も無力になることがあります。
また、弁護士に依頼して給与や収入、財産など差し押さえができれば、良いのですが、それすらまともにない相手も少なからず存在するのも現実です。
弁護士費用特約だけでは、100%回収できると限らないことも理解しておきましょう。
弁護士費用特約より確実な補償とは?
弁護士を使って賠償請求すれば、算定基準の違いもあるので賠償額が増えることがほとんどです。
相手方の保険会社が交渉テーブルについているのであれば、一安心です。
しかし、相手が任意保険に未加入だったり、保険を使うことを拒否していたりする状況では、弁護士への依頼だけで、簡単に賠償金を回収できるかというと難しいと言わざるをえない状況です。
前述でも解説しましたが、人身傷害保険と車両保険に加入していれば、とりあえず自分の保険で治療や修理を行い、訴訟の経過を見守ることが可能です。
無過失事故で自分の保険を使っても、人身傷害補償のみの請求は、ノーカウント事故で等級ダウンしません。
また、車両保険も「車両無過失事故に関する特約」が付帯されている契約は、保険を使ってもノーカウント事故なので翌年保険料アップする心配もありません。
弁護士費用特約は、人身傷害保険と車両保険の三位一体で、強固な補償が可能になるといえるでしょう。
最後に、今回の記事では、損保18社の弁護士費用特約について、調査した結果を表にまとめましたが、この結果だけを踏まえて保険会社を選ぶこと無く、他の特約や補償、保険料を加味して熟考し比較見積もりを集めて検討して下さい。
この記事が、皆さんの自動車保険選びの一助となれば幸いです。
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