ドイツ発!四輪独立サスによって格段に向上した操縦安定性
20世紀の幕開けと快進撃のメルセデス・ベンツ
20世紀初めの自動車業界は、現代にも通じる自動車の技術が確立されていった時期です。
特にダイムラーとベンツの合併によって、技術力を極めたメルセデス・ベンツの技術部長を勤めるフェルディナント・ポルシェ博士の手によって、最先端のスポーツカーやレーシングモデルがヨーロッパの自動車技術を強力に引っ張りました。
しかし、その時代のクルマは、板バネを利用したリジットアクスル、つまり左右がつながって動くサスペンション構造でした。
そのため、高速時のコーナリングや凹凸の激しい悪路などでは、しばしばアクシデントとなり、クルマが立ち往生するようなことも少なくありませんでした。
また、この時代クルマは、大型化が進みゆったりとした乗り心地を求める顧客も増えていました。
しかし、リジットアクスルは左右の動きが相互的に干渉するため、決して良い乗り心地とはいえませんでした。
もちろん、リジットアクスルの欠点として走行時の路面追従性が悪いこともあり、悪路の走行安定性と乗り心地、共に大きな課題となっていました。
メルセデス・ベンツ170からはじまった、四輪独立サスの歴史
ダイムラーとベンツがはじめて作った自動車を始め、19世紀末から世に出てきた自動車は、一部のレーシングカーを除いて、すべてがリジットサスペンションでした。
しかし、1931年、メルセデス・ベンツ170の発表がその後の乗用車のサスペンションに変革をもたらします。
メルセデス・ベンツ170は、この時代のクルマの中にあって地味なモデルでしたが、量産車として世界初の四輪独立サスペンションが採用されていたことで大変な注目を集めます。
フロントのサスペンションスプリングは、横置きに上下に分けて配置されたデュアルリーフスプリングをダンパーで支持すると言う、画期的なレイアウトです。
対して後輪は、シャシに固定したデファレンシャルケースから伸びるスイングアクスルを、左右独立して稼働するコイルスプリングによって支える作りでした。
スペースを効率よく利用できるサスペンションレイアウトにより、エンジンルームや室内レイアウトも自由度が高く、ミドルレンジのメルセデス・ベンツ170は好評でした。
しかし、四輪独立のサスペンション形式は、リジットアクスル方式の板バネを利用したサスペンションと比べ、非常にコストが掛かったこともあり、普及にはもう少し時間が必要でした。
FFと前輪ストラットサスペンションの登場
ヨーロッパで進んだ、モノコックボディの小型車を中心としたFF車とエンジンレイアウトとコストに有利なストラット型サスペンションを採用するクルマは瞬く間に広がります。
特に、小さなエンジンルーム内にエンジンからトランスミッションとデファレンシャルギヤまでをひとまとめに押し込む、日本の小型車には有効な手法のひとつとして多くの車種で採用されました。
サスペンションレイアウトは、メーカー各社で現在も研究開発が行われ、さまざまな方式が生み出されてきました。
俗に「足回り」と称されるサスペンションは、路面にタイヤを接地させる、もっとも重要なシステムといえるでしょう。
自動車購入の際に、数値には見えないサスペンションの良し悪しを見極めるには、試乗が不可欠です。
新車中古車にかぎらず、購入の際は実車を試乗して決めるようにしましょう。
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