英国の蒸気自動車の普及を妨げた赤旗法と自動車保険
蒸気自動車をとりしまる赤旗法、自動車保険の発売を遅らせた?
蒸気自動車の普及を実質的に妨害し、19世紀末に登場するガソリンエンジン搭載の自動車の普及の障害となった「赤旗法」が、間接的にも自動車保険の発売も遅らせたと言えます。
自動車保険は、19世紀末にめざましい普及を遂げたガソリンエンジンの自動車が、イギリス国内に増加したことにより、市場の要求も有って販売が開始されました。
しかし、多くの工業機械や製品、その輸出入に伴う貨物輸送など、保険商品は当時の金融商品としては、もっとも活発に新商品が作られていた時代です。
もし赤旗法による、自動車の普及妨害がなければ、自動車保険の販売ももう少し早かっただろうと、推察されます。
19世紀は蒸気機関車と鉄道の時代
ガソリンエンジンの自動車が生まれる前の時代は、蒸気機関の利用普及とともにヨーロッパ各地には鉄道網が敷かれました。
特に蒸気機関車を生み出したリチャード・トレビシック、実用の蒸気機関車を作り続けたジョージとロバートのスチーブンソン親子はイギリス出身です。
産業革命を支えた蒸気機関車は、イギリスからフランスやドイツ、大西洋を渡ったアメリカへも1930年代から一気に普及しました。
同様の動力を利用した蒸気自動車は、19世紀のフランスやアメリカにて富裕層を中心に拡大します。
ところが蒸気機関のお膝元といっても良いイギリスでは、蒸気自動車の普及に大きな障害が立ちはだかりました。
19世紀イギリスで蒸気機関自動車の普及を妨げた「赤旗法」
蒸気機関の開発がもっとも早かったイギリスでは、1827年頃から、乗り合い自動車(バスやタクシーの原型)として、蒸気自動車の運行が開始されています。
それまでに普及していた馬車に取って代わろうとする蒸気自動車の普及を危惧した、乗り合い馬車の組合などから、さまざまな懸念材料が示されました。
蒸気機関独特の騒音や燃焼による排出される煙、また、時折発生した爆発事故などが大きな理由です。
特にロンドン市街は産業革命のまっただ中、ロンドン型スモッグの発生により健康被害が顕在化し始めていた時期でもあり、大きな社会問題に直面していました。
こうした社会批判を受けてイギリス政府は、1856年に「赤旗法」を制定、蒸気自動車が現実的に利用不可能になる、厳しい法律を定めました。
ちなみに赤旗法の言葉の由来は、蒸気自動車の通行には人が赤旗の提示を行い、歩行者を先導する事が必要、と義務付けられていたからです。
つまり、「これから蒸気自動車が通行するので、皆さん気をつけて下さい」と赤旗を振って、交通整理を行いながらでなければ走れなかったという、とてもナンセンスな法律でした。
この法律により、蒸気自動車にとどまらず、後のガソリン自動車の普及においても他国に遅れを取ることになりました。
いつの時代も既得権益を主張する業者や組合を守るための法律は、健全な消費活動の妨害になることがほとんどです。
消費者に取ってマイナスとなるばかりか、社会的にも利益損失が大きく工業製品の開発が遅れるなど、国益をも阻害するという典型的な例のひとつです。
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