ドライバー必読!台風豪雨の冠水道路、走り方と水没時の脱出方法!
大型台風の接近や上陸が著しい昨今、集中的な豪雨による冠水した道路を無謀に通過しようとして、車を破損したり水没させたりしてしまう人が少なくありません。
自動車保険の車両保険を付けていれば多くの場合、損害は保険でまかなうことができますが、実際それ以上の事故に繋がることもあり、命も危ぶまれることがあります。
この記事では、冠水した道路を走る際の危険を具体的に知って、台風などの豪雨時に運転する際の注意点などを検討します。
目次
台風豪雨で水没すると車は全損?理由は?
台風や集中豪雨、ゲリラ豪雨などにより、道路や駐車場が冠水して車が水没することがあります。
車は、雨中での走行も可能になっていることから、「多少水に浸かっても走れる」というイメージを持つ人が多いのですが、防水対策などはほとんどなされておらず浸水をわずかに防ぐ程度なので、冠水した道路に進入することは大変危険な行為です。
車は水に浸かると弱い
昨今の防水レベルの高い携帯電話などの防滴レベルよりも低いかもしれません。腕時計の日常生活防水の範囲程度と考えるくらいが安全と見る方が賢明です。
水がかかって濡れる程度までは大丈夫ですが一般市販車の場合、エンジンルームが水に浸かっても普通に走れるようにはできていません。
したがって冠水道路での水没損害には、ユーザーの車への過度な期待による無理な走行によることも一因となっています。
もちろん、ゲリラ豪雨などによって予想以上に早く道路が冠水し水没するようなこともあり、思いもよらぬ場所で道路冠水に遭遇し水没してしまうことがほとんどだと考えられます。
悪天候の際は常に最新情報を集め、冠水道路を走らないことが懸命な判断です。
台風などによる洪水や一時的な冠水でも発生しているほとんどの損害は、全損扱いになります。その理由の多くは見た目以上に損害の程度が大きく修理復旧が困難と判断されるからです。
水没による車の損害については主に次のような理由が挙げられます。
車室内への浸水による汚損
室内のカーペットやシートなどは、泥や砂などを含む汚濁した水に浸かった場合、浸かってから清掃するまで数日が経過することがほとんどで、シミ汚れから汚泥による臭いなどを完全清掃除去することは不可能です。
また、室内の清掃作業だけでも多くの室内部品を外す必要もありますし、多くのパーツは交換が必要になるでしょう。
エンジンやモーターなど動力系統の水没による故障
エンジンやモーターは、水に浸かることを前提にして作られていないため、走行中、停車中に限らず水没した場合、エンジン補機類から本体まで交換が必要になることもあります。
特に走行中に水没しエンジンストップになってしまった場合、ウィーターハンマーによるエンジンの内部破損も疑われるため、エンジン内部に至るオーバーホール作業が必要なこともあります。
もちろん、動作中の動力用モーターなどへの影響も必至です。
駐車中に水没した場合、エンジンルーム内をよく乾燥させてから、エンジンをかけることが必須ですが、エンジンへの吸気口などへ水が入った場合は、整備工場にてエンジン内への浸水が無いことなど確認が必要になります。
電装系配線や各種センサーや制御パーツなどの水濡れによる損害
車室内やエンジンルーム、動力用バッテリーなど様々な配線類の水濡れも後の故障の要因となるので修理や交換が必要になります。
水没損害は、上記のような損害が合わせて起こるため、一般的に修理費用がかさみ結果として全損になることがほとんどです。
登録から間もない新車でも、概ね車室内のメーター等計器類のインパネまで水没すると、エンジンなども完全に水をかぶってしまうことになり、全損扱いとなることが多くなります。
また、車両価格の安い中古車の場合でも同様に、修理見積もりが保険金額を超えれば全損扱いとなります。
それでは、水没時の危険な状態をそれぞれ検証してみましょう。
水没でハイブリッド車は感電する?
「水没時にハイブリッド車は感電する」というまことしやかに伝えられる都市伝説ですが、これは真っ赤なウソです。
確かにハイブリッド車は、エンジンに代わる動力を発揮するモーターを作動するため、大きな電力を発揮するバッテリーを多く搭載しています。
しかし、通常雨天時の走行によるエンジンルーム内への水濡れは、想定範囲であり、万一の水没で感電するようなことはありません。
しかし、こうした作業は、整備士や消防隊員など専門知識を持った人がタッチすることになり、一般の利用者はエンジンなどのスイッチを切って避難します。
津波で流された車も感電しなかった
東日本大震災では、多くの車が地震津波により流されましたが、水没車による感電事故の被害報告はありませんでした。車両は外部破損もありましたが、搭載されたバッテリー装置が致命的な破壊に至ることは無かったようです。
余談ですが、ソーラーパネルのように太陽光が当たれば直流電流が発生する装置では、パネル単体や一部でも発電されるため、触れないようにするなど感電事故に対する注意が必要だそうです。
しかし、ハイブリッド車、EV車などは、水没程度で感電事故を起こすことはないので安心です。
ハイブリッド車などのレスキュー対応については、以下のトヨタ自動車のサイト内「救助」の項目にて詳しく解説されています。
また、ハイブリッド車のレスキュー取り扱い説明書は車種ごとにPDFにて配布されているので、オーナーは目を通しておくと良いでしょう。
勢いを付けて突入は危険!相手が水でも車は壊れる!
豪雨で冠水した道路上を無謀な勢いで走り抜ける車がいますが、大変危険な行為です。
その他の例だと、プールで飛び込みに失敗してお腹や胸から落ちると、肌が真っ赤になるくらい痛みがあります。
それほど抵抗がありますから車で速度を落とさずに突っ込めば、かなりの衝撃になります。
前面部の破損もある
わずか20cm程度の水深でも、速度を落とさず時速40km程度で飛び込めば、その衝撃でバンパーがはずれたり、フロントグリルやラジエターなどが壊れたりすることもあります。
運良く走り抜くことができても、フロントバンパー付近に設置されたエアバッグやレーダー、など各種センサーが破損し、ダメージによりメーター内のインジケーターが点きっぱなしになることもあります。
後で車を降りて確認してみたら、大きく壊れていたなどという事例も少数ではありません。
冠水道路へのダイブで命を落とすことも…
冠水道路へのダイブは、水深が深ければ車が一時的に水に浮いてしまい走れなくなることもあり、そのままエンストし徐々に水没するということも報告されています。
中には車から脱出できず水没により、車に乗ったまま溺れてしまうような人身事故も後を絶ちません。
「ウォーターハンマー」エンジンは水が入ると一瞬で破壊!
エンジンは水を吸うと止まることをご存知でしょうか?
しかも、エンジンが止まる際には大きな衝撃が伴い、「ウォーターハンマー」によりエンジンの内部が破損されることもしばしばあります。
このウォーターハンマーとは、空気と違い圧縮が困難な水が、空気の吸入口から入りバルブからシリンダー内に入り、勢い良く圧縮されることで発生します。
エンジン回転が高い場合や圧縮比の高い高効率エンジンなどでは、エンジンブロックをコンロッドが突き抜け破壊する「足が出る」といった症状に一瞬で至ることもあります。
排気管からも水は入る
エキゾーストパイプ、いわゆるマフラー側からも水深が深ければ、水圧で進入することがあります。
誤って水に入ってしまった場合は、落ち着いてエンジンを止めないよう少し回転数を高く保ち、ゆっくりとした速度で脱出するようにします。
操作のコツは「冠水した道路を通過するときの注意点と脱出法」で解説します。
20cm程度の冠水で発生することもある
20cm程度の水深でも勢い良く走ってくると、タイヤが左右に勢い良く水を跳ね上げますが、同時に同量の水をエンジンルーム側にも跳ね上げています。
アンダーガードなどにより水の大量流入を阻んではいますが、同時にフロントグリル付近へも相当な圧力で水がぶつかるので、思った以上にエンジンルーム内に水が入ります。
結果として、圧縮できない程度の水が吸入されてしまうとウォーターハンマーが発生することもあります。
逃げられない!60cmの水没でドアが開かなくなる
みなさんは、車が浮いてしまうほどの水深というとどの位をイメージされますか?
冠水道路などでは、水深60cm程度の冠水道路にフロントから斜めに進入すると、車は浮き始めます。
JAF(日本自動車連盟)が行なった実験動画を見ると、カローラクラスのFFセダンでゆっくり進入した場合でも浮いているので、軽自動車で勢い良く進入すれば40cm程度の水深でも浮いてしまいます。
【JAFユーザーテスト】
「クルマが水没!!水深何cmまで運転席ドアは開くか?(セダン)」
水に浮いた状態では当然、車の操作はできませんし多くの場合、その後の水没も免れません。そのようなときは脱出することが先決ですが、この状態がもっとも怖いのは、ドアが水圧によって容易に開かなくなり、車に閉じ込められてしまうということです。
それと、スライドドアのミニバンだと、容易に開くのではないか? と考える人もいるかもしれませんが、それも危険です。実験は、詳細にミニバンでも行なわれており、セダン同様にドアは容易に開けることができません。
実は、スライドドアの場合、ドアが長く大きい分だけ水圧が強くかかることになり、わずかに動かすのも厳しくなります。
また、実験では車が前に傾斜した状態でドアの重さもかさなり、女性では、ほとんど開けることが不可能でした。
【JAFユーザーテスト】
「クルマが水没!!水深何cmまでスライドドアは開くか?(ミニバン)」
いずれの場合も完全水没するとドアのない外圧が等しくなるため開けることができたようです。
しかし、車が水没するとき常に生存できる空間が残されているとは限らないので、直ぐに窓を開けることが懸命な判断です。
脱出についての詳細は「冠水した道路を通過するときの注意点と脱出法」で解説します。
止まらない!冠水道路を通過後ブレーキが効かなくなるってホント?
冠水した道路を無事通過して、ほっとしたのもつかの間、ブレーキが効かなくなっていることがあるので要注意です。
一般的な乗用車には、フロントにディスクブレーキを備えているので、まったく効かなくなうようなことはないのですが、ブレーキパッドが水をたっぷり含み冷えた状態になると、一時的に制動力が落ちます。
そしてそれ以上に影響を受けるのがドラム式のリヤブレーキで、冠水道路に進入したあとの数回のブレーキでは、恐ろしくブレーキが効かなくなることもあります。
ドラムブレーキは、FFの軽自動車からミニバンクラスまで幅広く採用されているブレーキなので、深い水たまりを走ったらブレーキの効きが落ちると覚えておきましょう。
鉄製のブレーキドラムの内側を半月状のブレーキライニングを内側から開いて制動をかける構造ですが、水に浸かるとドラムとライニングの間に水が入ってしまい、数回のポンピングでは水が排出されません。
また、水の排出後もライニングが乾くまで制動力が落ちるため、注意が必要です。
速やかに制動力を回復させるために、自ら出たらゆっくりと走りながら数回のポンピングブレーキとパーキングブレーキを併用して、水の排出とブレーキの乾燥に努めましょう。
制動力を実感するまで速度は上げないようにしましょう。
冠水した道路を通過するときの注意点と脱出法
冠水した道路は走らないことがベストな選択肢ですが、やむをえず通過するときや水没してしまったときの対処法をご紹介します。
冠水する雨量の目安
道路が冠水する恐れがある雨脚は、強い雨によって道路面から跳ねる水しぶきが白く見え、路面の白線や横断歩道などが見えにくくなる状態です。
他に歩行者の足元が見えにくい、他車両の路面に接したタイヤの黒い側面が見えないなども目安になるでしょう。
そのようなときは、アンダーパスなどの通行は避け、できるだけ排水能力の高い幹線道路を利用することが賢明です。
冠水した道路を走るときの注意点
やむをえず、冠水した道路を通行するような状況でも、車を道路脇に停車させ、先に進入している車がどの位の高さまで水に浸かっているか? 路側帯の縁石やガードレールの浸水状態を見極めてから、「100%水没しないことを確認して」進入の決定をして下さい。
まず、幹線道路の縁石は、15cmを基準に作られているので「縁石が隠れていたら水深は20cm以上」と認識しておきます。
そして、ガードレールは、一般道のモノの場合、その中心高さが約60cmで作られているので、ガードの下の部分で道路面から60cm位と見ておけば目安になります。
つまり、ガードレールの下端に水面が触れていれば、路面の水深は60cmに達しており、進入するべきではありません。
その高さまで水が溢れている場合、マンホールが外れていたり、水の中に障害物があるなど危険を測ることができないので、安易な進入は危険ですから絶対に止めましょう。
水深が20cm以下で安全と判断されるなら、ローギヤ、または、Lレンジなど、もっとも低いギヤでエンジン回転を1500~2000回展程度に保ち、ゆっくりと一定の速度で通過するようにしましょう。
前方車両との車間は十分に開けて、万一、前の車が止っても回避できるゆとりを持って進入することがポイントです。
エンジン回転をある程度上げて速度を保つコツは、ブレーキをかけながら進むことです。
もっとも簡単な方法は、坂道発進の要領でパーキングブレーキを片手で引きながらアクセルは一定の量で踏み、パーキングブレーキの加減で速度を調整します。
足踏み式の場合は、軽く踏んでパーキングブレーキを引きずった状態にして、アクセルで速度調整します。
少し高度ですが、オートマチック車の場合は、左足でブレーキを踏みながらアクセルを踏んで速度を調整することもできます。
いずれもエンジン回転を少し高く維持することで、排気管から水が進入し水圧によりエンストすることを防ぐことが重要です。万一のときのために、普段少しでも練習しておくと安心です。
水深が20cmを超えると安全とはいえず、ドアの下部分から浸水する可能性も拭えないので、縁石が隠れていたら止めて、回り道を選択する、水が引くまでファミリーレストランなどの駐車場に入り待機するなど、安全策を取りましょう。
もっとも怖い水没!脱出方法は?
車の水没には危険が伴い、水没車両に閉じ込められて溺れる人も報告されています。
先のリンク先にあるJAFの実験動画も見られるように、ドアは容易に開かなくなっているので、最優先に行なうことは次のように行動します。
2.シートベルトを外す
3.ちゅうちょせず窓から脱出する
車が浮いてしまった時点で万事休すなので、雨や水に濡れる覚悟をして、すぐに窓を開けて車から脱出するようにして下さい。
ドアは、浸水するまで容易に開けることができませんので、無駄に時間と力を費やすこと無く、確実な方法を選択していきましょう。
水没したら、ドアと窓どちらから出ても車内が浸水するという結果は同じです。一刻を争うこともあるので救命を最優先として考え行動します。子供がいる場合は、外にいる大人に救助のサポートをできるだけ求めるようにして2次災害防止にも努めて下さい。
落ち着いて速やかに窓を開け、ベルトを外し車外に出ることを最優先にしましょう。
万一の備え
電力が落ちてパワーウインドウが開かないとき、交通事故のときの脱出、他車のけが人などを救護する際に車のガラスを割るための脱出用ハンマー、脱出用ポンチなどの専用工具(2千円から5千円くらい)が市販されています。
ポンチタイプは、押し付けるだけで割れるので女性の方にも使いやすくオススメ、万一の際、すぐに取り出せるようドアポケットなどに常備しておくことが肝要です。
なお、ガラスを割って脱出や救護するときは、サイドガラスのみにしましょう。サイドガラスは割れた場合、粒状に細かく砕けるため、皮膚を傷つける割合が低くなり安全です。
逆にフロントガラスは、特殊なフィルムが入っているため割れにくくなっています。また、割れた場合も破断面がとても鋭利になるので危険です。必ずサイドガラスを割って脱出して下さい。
水没後は速やかに保険会社に連絡する
水没後の車の状態は、乾燥することで状態が変化しますから、速やかに保険会社と自動車業者への連絡をしましょう。
汚泥や流れてきた堆積物に埋まるなど、見るからに水没後の状態ならそのままの状態で診てもらうようにします。
しかし、走行中に水没しなんとか脱出して帰宅した場合、20cm程度の水深の通過でなんでもなければ良いのですが、水没中エンストしその後エンジンから異音が聞こえる、など違和感があるときは、速やかに整備工場や保険会社に連絡し相談して下さい。
最後にもう一度、車を使うなら「冠水した道路は避ける!」ことが最善の安全策になるでしょう。
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